
一枚のコースターから、つくり手を知る
ソウルを訪れた際、セレクトショップで購入した一枚のコースター。
それが、layer of hugとの出会いでした。
どんな人がつくっているのだろう。
気になって調べてみると、済州島で活動する布の工芸作家、ホン・ジヨンさんにたどり着きました。
天然染色を中心に、ティーマットや包み布など、暮らしのそばにあるものを手がけています。
韓国語のブランド名「포옹의 겹(layer of hug)」には、一枚の布で、時には母の懐のようにあたたかく、時には海がくれる涼やかな慰めのように、誰かを包み込みたい。そんな想いが込められています。
その言葉だけでは、まだ少しわからなかったことも。植物を育てる様子や、制作について綴られた投稿を読むうちに、少しずつ身近に感じられるようになりました。
ソウルで出会った一枚の布。その背景には、済州島の自然と、日々の小さな選択がありました。

森や海、自然の中で感じたことを、布に
ジヨンさんは、時間を見つけて森や海へ出かけるそうです。
自然のなかで過ごすうちに、心が温まり、慰められる。
そのときに感じた自然の流れを残したいという思いが、天然染色による布のものづくりにつながるそうです。
染めに使う藍も、自分で育てていらっしゃいます。
小さな鉢から始め、種を採って、またまく。そうして育て続けるうちに、いつしか畑には緑が広がる。
Instagramの投稿には、すくすくと育つ藍を眺める喜びや、生葉から青い色が生まれることへの驚きが綴られています。
今年は花が咲くのが遅い気がするけれど、ちゃんと種を採れるだろうか。
そんなふうに植物を気にかける言葉からも、日々そばで見守っている様子が伝わってきます。
季節のなかで目に留まったものを、暮らしで使う布にして届ける。作品を知るほどに、ジヨンさんが見ていた景色にも、思いを巡らせたくなります。

長く続けるために、大切にしていること
layer of hugでは、すべての工程を手作業で行っています。制作も、日々の運営も、ジヨンさん一人で。
多くの注文が寄せられるなか、届けたい気持ちに手が追いつかないこともあるそうです。
それでも、大量生産はしない。以前から抱いてきたその思いは、今も変わりません。
受ける注文の量や方法を見直し、ときには立ち止まって整える時間を取る。自分の速度で、長くつくり続けていきたいという言葉が印象に残りました。
使う人へ向けた提案にも、長く付き合ってほしいという気持ちが表れています。布巾として使ったり、ものを包んだり、食べ物にかけたり。一枚の布にいろいろな使い道があることを、製品とともに伝えています。
そして、いつか役目を終えたあと、自然へ戻ることも考えながら、素材や制作方法を選んでいるそうです。
つくるときも、使うときも、その先も。
layer of hugが大切にしている「誰かをやさしく包み込みたい」という想いが、こうした一つひとつの選択につながっていました。
旅先で買ったものの背景を知ると、手元にあるものへの気持ちも少し変わります。
私たちが持ち帰ったコースターも、これからどんなふうに暮らしに馴染んでいくのか。長く使いながら、その変化を楽しんでいきたいと思いました。
