
何かの記憶を宿した、鋭いかたち
何か大きなものから切り離されたような、鋭く、不均衡なかたち。
和ろうそく大與の「MORPHE 02 Shard」は、黒曜石の断片から着想を得てつくられたキャンドルです。
まっすぐに伸びる一般的なろうそくとは異なり、その姿は崖の一部にも、地中から掘り起こされた鉱石にも見えます。
表面に残された細かな凹凸や線は、長い時間をかけて生まれた地層のよう。
新しくつくられたものでありながら、ずっと以前からそこにあったような、不思議な静けさをまとっています。
火を灯していないときにも、ひとつのオブジェとして空間に置いておきたくなる。
まず、その名のない存在のような佇まいに惹かれました。

内側に火を抱き、変わっていく姿
火を灯すと、「Shard」は内側にあたたかな光を抱え込みます。
米ぬか蝋を通してにじむ橙色の光と、そのまわりに落ちる深い影。
鋭い断片のようだった姿は、上部から少しずつ溶け、どこか遠くの山並みや、火をたたえた小さな器のようにも見えてきます。
外から照らすのではなく、自らの内側から、形の凹凸や輪郭を浮かび上がらせていく。
灯す前には見えなかった表情が、火と時間によって少しずつ現れていきます。
はじめに手にしたときの姿を、同じまま残しておくことはできません。
けれど、形が失われていくからこそ、そのときにしか見ることのできない美しさがあるのだと思います。
昨日まであった輪郭が少し崩れ、次に灯すときには、また違う光と影が生まれる。
変わっていく過程まで含めて眺めること。
このキャンドルは、火を灯すという行為そのものを、ひとつの静かな体験へと変えてくれます。

受け継がれた素材から生まれる、新しい風景
この彫刻のようなキャンドルに使われているのは、国産の米ぬかから採れる植物性の蝋。
米ぬか蝋は硬く、燃焼時間が長いことに加え、においやすす、蝋垂れが少ないという特徴があります。「MORPHE 02 Shard」は、ひとつで約20時間、移り変わる姿をゆっくりと楽しめます。
大與は、1914年の創業から四代にわたり、植物蝋を使った和ろうそくづくりを続けてきました。
私たちがこのキャンドルを良いと思ったのは、長く受け継がれてきた素材や技術を守りながら、そこから、今までになかった灯りの風景を生み出しているところ。
伝統は、昔からある形をそのまま残すことだけではなく、今の感性と出会うことで、また新しい姿へと変わっていくものなのかもしれません。
形を失いながら、その瞬間だけの風景を残していく「Shard」。
その静かな変化を眺める時間も、このキャンドルが灯してくれるもののひとつです。
