
庭園の止め石を、日常の道具として
関守石(せきもりいし)とは、日本庭園や茶道の場で「ここから先は立ち入りをご遠慮ください」という意思を示す止め石のことです。Liaison(リエゾン)はその伝統的なかたちを現代の暮らしへ引き込み、北海道固有の素材である札幌軟石とエゾシカ革で仕立て直しました。
オブジェとして、アロマストーンとして、ペーパーウェイトとして。用途を一つに決めず、置いた場所と気分に合わせて自由に使っていただける道具です。多孔質な石の構造を活かし、精油を数滴垂らすと1〜2日ほどかけてゆっくりと香りを放ちます。
エゾシカ革の紐が石の胴を十字に巻き、先端を束ねて立ち上げた結びが、庭石らしい凛とした佇まいをそのまま手元に届けています。黒い革紐と淡い灰色の石が描くコントラストは、置くだけで空間に一点の重心をつくります。

4万年前の火砕流が、この石になった
札幌軟石は、4万年前に支笏湖を生んだ火山の爆発で流れ出た火砕流が冷えて固まったものです。北海道開拓期には火災が多発する街を守る建材として重宝され、保温性が高く火にも強い性質が人々の暮らしを支えました。現在この石を切り出している採石業者は全国でわずか1社。2018年には北海道遺産にも登録された、極めて希少な石材です。
工房では、石の粉が漂う中でやすりを当てる乾いた音が響きます。力を込めて角を削り落とすたびに、鋭かった輪郭がなだらかな曲線へと変わっていく。切り出す場所によって白や黒の粒の混じり具合が異なり、同じ表情のものは二度と生まれません。
組み合わせるエゾシカ革は、農作物への被害が問題となる中で捕獲されたシカの皮を素材として活かすという考え方のもと選ばれています。しなやかな革紐が石のくぼみに沿いながらきつく締め上げられることで、異なる素材のふたつがひとつの道具として結びついています。

欠けても、それがこの石の続きになる
衝撃を受けると角が割れたり、使ううちに少しずつ欠けたりすることがあります。Liaison(リエゾン)はそれを不良とは呼ばず、自然の経年として受け入れてほしいと伝えています。欠けるたびに4万年前から続く地層の断面が顔を出す。そう思うと、傷もこの石が持つ時間の一部として映ります。
本を読み進めるデスクの片隅、玄関の小さな棚の上。視界にふっと入る関守石は、そこにあるだけで空間に飾らない存在感を添えます。かつて人の歩みをそっと止めた道具が、現代では忙しない思考を一瞬だけ立ち止まらせる役割を担います。
AEがこの関守石を選んだのは、道具としての機能と、背景にある地質・歴史・生態系という三つの文脈が、ひとつの石の上で静かに重なっているからです。北海道という場所が持つ時間の厚みが手のひらサイズに収まり、日常にほのかな間をもたらしてくれる。その存在感が、慌ただしい日の途中でふと深呼吸したくなったときの、そっとした支えになると感じています。
